▲特別な教育的支援は「特別な場で」から「全ての学校で(普通に)」への変遷(R5版)│ivretnI│ we私が教員になった頃、特殊教育の対象者は義務教育段階の1%に満たなかった。ところが37年後の現在…約15%になっている。15倍ということである。小中学校在籍者特別支援学校在籍者数特別支援学級在籍者数通級による指導を受けているもの通常の学級に在籍する特別な教育的支援が必要な児童生徒特別な教育的支援が必要な児童生徒の割合は?(参考 高等部生徒数)からです。たとえば、近年の小学校教科書には、手話や点字、外国籍の子どもや車椅子の子どもが登場するなど、さまざまな背景や特性のある人が身近な存在として描かれるようになってきましたよね。私が特別支援教育に携わり始めた頃には、こうした描写はほとんど見られませんでした。教科書を通して“違いを認め合う”という姿勢が浸透しつつあるのを感じます。また、特別支援教育が進んだ理由には、現場での理解と支援の重要性が広く認識されたこともあります。私自身、特別支援教育の現場での経験が評価され、文部科学省の特別支援教育調査官を務めることとなりました。その立場で全国の教育現場を訪れ、支援のあり方についての研究や政策策定に関わる機会を得ました。属性や違いを理由に分離するのではなく、多様な背景がある者同士が互いに尊重し合い、支え合う関係を築くこと。それがインクルーシブ教育の本質だと思います。近年のコロナ禍も、インクルーシブ教育の重要性を感じさせる出来事でした。コロナ禍では医療だけでなく、経済、心理的サポート、地域ごとの対応など、多方面からの支援が必要とされました。これまでの教育が「正解のある課題」を解くのに重きを置いていたのに対し、コロナ禍での課題には答えがなく、さまざまな視点や柔軟な対応が求められました。多様な人々と協力し、支え合いながら問題を解決する力を育むには、こうしたインクルーシブ教育が不可欠だと再認識させられました。私は長く特別支援教育に携わってきましたが、そもそもは聴覚・言語障害が専門でした。キャリアの初期には、北海道の特別支援学校、いわゆる「聾学校」で教員をしていました。教室にいるのが耳の聞こえない子どもたちばかりで、聞こえるのは私だけという環境です。教えるうちに、子どもたちが“見えない”部分での支援が必要であることを強く感じ、多様なコミュニケーションを使って言葉や知識を伝えようと試行錯誤した日々を覚えています。こうした現場での経験が、私にとってインクルーシブ教育の根底となっているのです。―先生ご自身も北海道の特別支援学校での経験を積み重ねてこられたのですね。現場での経験がインクルーシブ教育の考え方の原点になっているとは興味深いです。では、日本でインクルーシブ教育が注目される理由についてお聞かせください。日本においてインクルーシブ教育が注目されるのは、社会が多様な価値観を受け入れる方向に進んでいる▲大西孝志教授「インクルーシブ教育こそ持続可能な社会をつくる最適な方法だと確信しています」と語る大西教授▲聾学校での経験17年間、北海道(室蘭・札幌)の聾学校で教職を経験。クラスに耳の聞こえる人が自分だけであった昭和62年1630人6万1千人(0.3%)9万1千人(0.6%)0人(0%)(通級の制度がないため)0人(0%)(そのような調査がなかった)0.9%32642人令和5年941万人8万5千人(0.9%)37万3千人(4.0%)18万2千人(1.9%)令和3年度の実績約84万人(8.8%)8.8%から推測15.3%65645人(専攻科含)この37年で小中学生は689万人減少2万1千人増加高等部を含めるともっと28万2千人増加
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